研究分担者は、これまでにバングラデシュ産シロアゴガエル近縁種の皮膚からフグ毒テトロドトキシン(TTX)を検出するとともに、抗TTXモノクローナル抗体を用いる酵素免疫学的手法により、ハチノジフグの皮膚におけるTTXの微細分布を調べ、同毒は表皮のsucciform細胞ならびに基底細胞に分布することを初めて示した。本研究は、これらの研究を踏まえ、シロアゴガエル近縁種を含む種々のTTX保有生物を対象に、各組織におけるTTXの微細分布を明らかにすることを目的とする。 研究分担者は、平成14年10月1日の採用開始以来、実験機材や試薬類などの準備を整えるとともに、電子顕微鏡によるTTXの超微細分布の可視化も視野に入れ、関連文献の検索を行ってきた。また、これらの作業と平行して以下の準備もしくは予備実験を行った。 1)マフグ科の有毒フグ類、イモリ、ヒラムシ、ヒモムシ等フグ毒保有生物の試料を採集した。 2)電子顕微鏡による観察に適した免疫組織染色法を確立するため、一部の有毒フグを用いて予備的な染色と観察を行ったところ、(1)パラホルムアルデヒド等を含むリン酸緩衝液で固定、(2)LR白色樹脂に包埋、(3)超薄切切片作成、(4)抗TTX抗体、次いで抗マウスIgG immunogoldと反応、(5)酢酸ウラニルで染色、という手順により、一部の組織でTTXの超微細分布の可視化が可能であることが示された。 今後は、収集したフグ毒保有生物について、順次各部位の組織切片を作成し、すでに確立した方法に基づき免疫組織染色を施したうえ、光学顕微鏡下で毒の微細分布を観察するとともに、電子顕微鏡観察用の組織切片作成手順を改良し、種々のフグ毒保有生物についてTTXの組織内超微細分布の可視化を試みる予定である。
|