研究概要 |
Tリンパ球の活性化には、T細胞抗原受容体(TCR)による抗原認識とともに数種の共刺激分子からの刺激が伝達される事が重要である。これらの共刺激分子には、T細胞活性化につながるシグナルを伝達するCD28や、逆に抑制性に働くCTLA-4,PD1等があり、免疫応答や自己寛容の成立/維持に主要な役割を果たしている。PD-1は、1992年に当研究室で単離された抑制性シグナルを伝達するリンパ球表面分子であり、その遺伝子破壊マウス(PD-1ko)は自己免疫病を自然発症する。興味深い事に、自己免疫の標的臓器/症状はマウスの遺伝的背景で大きく異なる。最近得られた予備的な実験結果から、抗体遺伝子のクラススイッチ及び親和性成熟能を欠損するAID遺伝子破壊マウスと、PD-1の二重欠損動物では、著しい自己免疫症状の亢進が認められることが示唆された。AID遺伝子破壊マウスにおいては、腸管内細菌叢のバランスが著しく崩れ、腸管粘膜固有層内のリンパ濾泡の拡大、ひいては全身性のリンパ節腫脹を呈する。本研究は、腸管系におけるPD-1の役割を免疫寛容誘導時および、腸管常在細菌叢の生体側からの制御の点から検討、自己免疫病病状との関連を明らかにすることを目的とする。AID遺伝子破壊マウスの、腸管孤立リンパ小節拡大の程度は、PD-1koにおける自己免疫症のように、マウスの遺伝的背景(C57BL/6とBALB/c)によって大きく異なることが明かとなった。そこで我々はその2系統のマウスにおいて野生型とノックアウトの間で腸管リンパ球の数、種類、PD-1の発現をFACSを用いて比較検討した。その結果、両系統のマウスに於て上皮内T細胞に小数のPD-1陽性細胞を認めた。これらは数的には、AID野生型との間に大きな差は認められない。上皮内でのCD25陽性regulatoryT cellにも大きな差は認められない。今後、これらPD-1系の機能をダブルノックアウトや、ブロッキング抗体によって検討する。
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