研究概要 |
ウィルソン病は常染色体性劣性遺伝、銅代謝異常症である。発病率は世界中で35,000人に一人で、保因者は約90人に一人である。本症の症状が多彩であるため、診断が遅れ、手遅れになる例が今でもしばしば見られる。本症の責任遺伝子-ATP7Bにおける解析では、ヨーロッパ系の患者のうち約1/3はH1069Q変異で、日本人及び韓国人患者のうち約1/3はR778L変異であった。しかし、中国の患者に関する報告は少ない。本研究では中国大陸のウィルソン病患者の主な遺伝子変異を明らかにした。更に遺伝子変異と臨床症状及び治療との関係を解明し、最も有効な病型別治療法を検討するために、中国語版の調査票を作成した。 [対象および方法]対象及びサンプルの解析:中国青島大学医学部医学遺伝室の杜嗣廉教授及び日本側の臨床医師の協力を得て、40人の中国人患者と11人の日本人患者の末梢血液からDNAを抽出し、Exon8をPCR法で増幅し、direct sequencing法でExon8の遺伝子解析し、変異を同定した。日本語版と中国語版の調査票の作成:欧米、日本と中国で報告されたウィルソン病に関する文献を調べ、日本側及び中国側(青島大学医学部医学遺伝室の杜嗣廉教授と東南大学基礎医学部徐淑芬先生)の協力者と連絡を取って、話し合って、日本語版と中国語版の調査票を作成した。 [結果及び考察]40人の中国人ウィルソン病患者において、33.8%のアレルはR778L変異であって、11人の日本人患者は25.0%のアレルはR778L変異であった。すなわち、欧米の患者と異なって、主な変異は日本人患者と同じであった。作成した中国語版の調査票を中国での各協力者に送った。 これから中国人と日本人患者におけるATP7B遺伝子全長の変異を調べる。日本と中国人患者を追跡し、中国版と日本語版の調査票で臨床症状と治療を解明、比較し、最も有効な病型別治療法を樹立する。中国の一部地域での発病率を調べる予定である。
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