研究概要 |
多くの海産魚類は多量の小卵を産出する代償として、個体発生の初期に大量死亡が発生し初期減耗と呼ばれる。本課題では、仔稚魚の発育や成長そのものに内在する初期減耗の内的要因を解明することを目的とし、生活史戦略の異なる数種の魚種を取りあげ、発育、成長特性を核酸、タンパク質、タンパク質合成・分解関連酵素などの個体発生に伴う動態より解析する。また、生化学的な動態に対する水温や餌の質・量の影響について、種の特性を把握し種間の比較分析を行う。 本年度は、カレイ型変態を行う魚種の代表種としてのヒラメと、最も典型的な沿岸魚類の生活史を有するスズキ目魚類の代表種としてマダイを中心に研究を進めた。また、スズキ及びアユについても予備的な飼育実験を行った。 ヒラメ浮遊期仔魚を15,18,21℃で飼育すると、成長速度は高温ほど速く変態も高温において早期に開始されたが、変態時の全長は高温ほど小さかった。ヒラメ稚魚を、冷凍アミ類、配合飼料、冷凍アミ類+配合飼料の3通りの給餌条件下、4通り(15,18,21,24℃)の飼育水温で飼育したところ、成長速度は15℃区を除いて、配合飼料>冷凍アミ+配合>冷凍アミとなった。15℃区では、冷凍アミ+配合>配合飼料>冷凍アミであった。また、仔魚期と同様に稚魚期においても成長速度は高温ほど高い傾向が明瞭であった。マダイ稚魚もヒラメ稚魚と同様であり、15,18,21,24℃の水温条件下では高水温ほど成長速度が早かった。 現在これらの各実験区で得られた標本について、RNA量、DNA量、総タンパク質量、クエン酸生成酵素活性、乳酸脱水素酵素活性を測定しており、発育段階、環境水温、餌条件等と成長速度やタンパク質合成、エネルギー生成との関係について分析を行っている。
|