研究概要 |
ファーストフィードバックシステムは衝突点でのビームビーム相互作用を利用した高速なビーム軌道補正である。先ず、このシステムの性能評価をシミュレーションによって行った。ナノメータサイズのビーム同士による衝突のシミュレーションはCAINプログラムを用いた。これにより互いに垂直方向にずれたビーム同士の衝突によりそれぞれのビームがどれくらい偏向を受けルミノシティーを失うのか定量的に評価することができた。例えば、このずれが3.5σ(約10nm)とすると半分程度のルミノシティーを失う。また、10σでは80%強を失ってしまう。このようなルミノシティーの損失を補正し回復するフィードバックシステムとして、(a)simple,(b)delayed,そし(c)improvedの3つのモデルを考案し、それぞれについてシミュレーションによりその性能を評価した。simpleモデルでは、衝突点下流での偏向角の測定から上流での磁石による補正までの約30ナノ秒という時間の配慮がなされていないため、1に近い大きな補正係数を用いたフィードバックでは補正軌道が振動してしまう。このため、小さな補正係数を用いると補正が低速になってしまう。そこで、直前の補正係数を記憶し続けるdelay回路を追加するdelayedモデルが考案された。このモデルでは、補正係数として1を用いることができるため高速なフィードバックを達成することができる。ただし、2つのビーム同士のずれと偏向角の関係は、ずれが大きいとき非線形となるので、それに対応するものとしてimprovedモデルが考案された。上記の(a),(b)についてはATFのビームにより基本的な機能が試験された。現在、この試験結果を踏まえて、システムに必要な電磁石、ビーム位置モニター、電気回路の設計を行っている。
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