中国南部の経済成長と日系子会社における労働力移動

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02F00799
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 西川 潤 早稲田大学, 政治経済学部, 教授
• 研究分担者: AUGUSTIN‐JEAN L. 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 外国人特別研究員
• キーワード: 経済開発(Economic Development) / 日本海外投資(Japanese FDI) / 起業家精神(Entrepreneurship) / 空間経済(Spatial Economy) / 中国経済(Chinese Economy) / 経済統合(Economic Integration) / 香港(Hong Kong) / グローバル化(Globalization)

研究概要

本研究の目的は、中国南部の経済成長と日系中小企業のグローバル化の相互作用を明らかにすることである。本研究では、日系中小企業が中国南部で経験する、労働力をどう管理するかという問題を抱えながら、子会社を起業する困難に分析の焦点を置く。香港は中国南部の開発や外資調達の役割を有しているために、とりわけ香港が辿った開発過程と中国と他のアジアの仲介者としての役割の分析を重視する。
中国では、法による企業保護は限られている。所有権や契約は適切に保護されておらず、土地の所有権も認められていない。このことからは、リスクや不確実性が生まれる。こうした傾向は、1980年代に進められた地方分権政策によって更に増大している。その結果、取引はしばしば市場を介さずに、官僚的なネットワークを通じて行われる。取引費用を避ける目的で、地元や外国企業は、地方幹部とのネットワークを作る。
外国企業はまた、安い労働力や安価な土地を国内で使用するが、それは海外で確保した未加工原料や資本を利用するためである。外資系工場に財と資本を供給する役割を有しているが故に、香港は中国にとって必要不可欠な地域として存続している。中華人民共和国は世界第2位の外国投資受入先であり、香港の相対的役割は減少しているとはいえ、依然として極めて重要性である。
本研究は、従来取り入れられてきた経済分析の定説とは異なり、管理制度と経済組織は相互作用を持つという立場にたち、企業のブラックボックスの部分、即ち意思決定の過程にメスを入れる。日系中小企業の意思決定過程については、日系中小企業の社長や香港や中国の日系子会社への聞き取り調査を通じて分析していく。この方法論は、中国における日系中小企業の起業決定要因と共に、香港や東アジアと中国南部の経済統合が進む中で日系中小企業の役割に対して新たな知見をもたらすものである。

研究成果

• [文献書誌] Augustin-Jean, L.: "Les politiques d'ameragement de l'espace et le developpement a Hong Kong : la reussite economique est-elle reellement le fruit du liberalisme?"Espace et Societe. (Forthcoming).
• [文献書誌] Augustin-Jean, L: "Les entreprises rurales et le developpement regional en Republique populaire de Chine, Deuxieme partie : les dynamiques entrepreneuriales dans les districts de young' an et de Zhangpu"Geographie, economie et societe. Vol.4,No.4. 443-463 (2002)
• [文献書誌] Augustin-Jean, L: "Les entreprises rurales et le developpement regional en Republique populaire de Chine, Premiere partie : le contexte institutionnel et les reformes chineiss"Geographie, economie et societe. Vol.3,No.3. 323-336 (2002)