研究概要 |
サトウ博士は、平成14年11月29日以来、「ケナガカブリダニにおけるメチダチオン抵抗性の分子機構」に関する研究に従事し、以下のような結果を得た。 野菜茶業研究所金谷支所より分譲された、石垣系及び金谷系ケナガカブリダニを有機リン殺虫剤のメチダチオンで正逆淘汰を行った。メチダチオン感受性系統育成のため、石垣系統は5回、金谷系統は8回の逆淘汰を行い、それぞれのLC50値は67.6から1.59ppmに、112から4.41ppmになった。また、メチダチオン抵抗性系統育成のため、金谷系統を7回淘汰し、LC50値は112から816ppmになった。淘汰した金谷系統の抵抗性比は、石垣系統と比べ513倍に、金谷感受性系統に比べ177倍となった。Sato et al.(2000,2001)によれば、ケナガカブリダニのメチダチオン抵抗性は酸化酵素の活性上昇によるとされていることから、モノオキゲナーゼ活性を測定したところ、金谷抵抗性系統は、金谷感受性及び石垣感受性系統に比べそれぞれ3.3倍と5倍の活性を示した。また、卵、幼虫、第一若虫、第二若虫、成虫期に対するメチダチオン感受性とモノオキシゲナーゼ活性を比較したところ、両者には高い相関が認められた。更に、チトクロームP450遺伝子の内、CYP4遺伝子のプライマーより、58種のシークエンスを得、4種のCYP4遺伝子をクローニングした。RT-PCR法により、3系統におけるこれら4遺伝子の発現を調べたところ、一つの遺伝子のみ、金谷抵抗性系統で遺伝子発現が高かった。従ってこの遺伝子が、抵抗性に関与していると考えられ、今後この遺伝子を更に研究する必要があると考えられた。 この研究を実施するため、サトウ博士は、ケナガカブリダニの餌となるナミハダニの飼育、またその飼育のためにインゲン豆苗の管理と大変な労力を費やし実施したものである。
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