今年度の本研究の成果を以下の2点にまとめる。 1.小麦割り当て制度と製粉業の生産性 日本の製粉業について、都道府県レベルの工業統計表をつかい、割り当て制度の廃止による生産性の規模間格差について、定量的に明らかにした。『新たな麦政策大綱』によって課題とされている小麦加工産業の近代化・合理化について、原料調達における競争の促進が課題とされている。 こうした割り当て制度の廃止は、特に大規模工場の平均費用低下率が高く、中小規模の工場に対して有利に働くことが明らかとなった。したがって、従来の割り当て制度は生産性の低い工場を保護する役割を果たしてきたといえ、割り当て制度の廃止は、規模間格差の拡大につながる。 しかしながら一方で、平均費用の値は大規模工場の方が高く、必ずしも中小規模工場に対して競争力をもつものではないと考えられる。また、大規模工場の平均費用が高い理由について、規模が拡大以上に小麦投入量を必要とする技術的な特徴をもっているためであると考えられる。 また、同大綱がふたつめの課題とする、立地ごとの適正規模での操業については、現状の大規模工場では過剰な資本投入があり、中小規模工場では、過少な資本投入がみられた。 2.アメリカの小麦フードシステム アメリカの小麦フードシステムを、一次加工である製粉業から二次加工のパン製造とシリアル製造について現状をまとめた。特に製粉業やシリアル製造の競争構造は独占禁止法とのかかわりで近年、政策的な重要度をましている。また、パン製造については、従来の小売販売にも冷凍生地の提供というかたちで大手企業の参入がはじまっており、その動向に注目が集まっている。
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