研究概要 |
今年度の本研究の成果は以下のとおりである. <アメリカにおける小麦粉製品のフードシステム> アメリカにおける小麦製品のフードシステムを製粉業,パン製造,シリアル製造を中心にその現状をまとめた.各産業内では大手企業による水平統合が進んでいることが特徴で,銘柄が淘汰されている.一方で,フードシステムの流れの中では,垂直的な統合は少なく,とくに製粉と二次加工では顧客と競合することから企業合併はみられなかった.近年,業種を越えた多国籍企業の参入も多くみられることから,今後の動向が注目される. <わが国製粉業の規模の経済性とその要因> わが国の製粉業について,通産省「工業統計表(産業編)」の都道府県レベル産業細分類をもちい,立地ごとに規模の経済が発揮されているのかについて定量的に明らかにした. 具体的には,千葉,神奈川,愛知,兵庫の4県を大規模工場とし,北海道,栃木,大阪,福岡の4県を小規模工場として計測した.計測には,費用関数(一般化レオンチェフ)をもちい可変費用最小化から関数を特定し,原材料,資本を順次最適化しながら中期,長期へと考察を進めた. 結果は,大規模,小規模ともに規模の経済性が発揮されていた.したがって,ともに長期平均費用曲線はU字型であり,費用逓減領域で操業していることが明らかである.ただし,その要因を各要素ごとに規模に対する弾力性からみていくと,規模によって違いがみられた.大規模では資本,原材料,エネルギーのすべてで規模の経済が働き,とりわけ原材料のシェアが大きいことから平均費用低減への貢献度が最も高く,一方の小規模では労働による貢献が最も高かった. こうしたことから,仮に原材料の割り当て制度が廃止され,自由に買い入れることができるようになった場合,原材料をより多く投入することで平均費用が低下する大規模が,必ずしも低下しない小規模に対して,費用面で優位に立つことが考えられる.
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