研究概要 |
ノルゾアンタミンは1995年、名古屋大学の上村先生らによって奄美大島近海のスナギンチャクより単離、構造決定された骨粗鬆症治療薬としての優れた活性を示す海洋産ゾアンタミン系アルカロイドです。ゾアンタミン類はABCDEFGの七個の環が縮環した極めて特異な立体構造を有しており、国内外で活発に合成研究が展開されていますが、ノルゾアンタミンを含めゾアンタミン類はいずれも未だにその全合成が達成されていません。本研究はノルゾアンタミンの不斉全合成を目指すものです。 平成14年度は分子内Diels-Alder反応を鍵反応としC環部のC12位、C22位の二つの四級炭素を含む五連続不斉中心を立体選択的に一挙に構築し、ノルゾアンタミンABC環部の不斉合成に成功しました。本年度はABC環部から種々の変換反応を経た後、分子内アシル化反応続くメチル化反応により合成上の課題となったC9四級メチル基を高立体選択的に構築することに成功しました。続いてカップリング反応前駆体体となるアルキンへと変換し、シトロネラールから短段階かつ高収率で合成したアミンセグメントとの1,2-付加反応によるカップリング反応により、ノルゾアンタミンのすべての炭素のそろったカップリング体を高収率で得ることに成功しました。その後、脱保護、FG環部の環化反応、A環部エノンの構築を行った後、最後に酸性条件下でのDE環部の連続的な環化反応を行い、ノルゾアンタミンへと変換しました。得られた合成品は天然体の各種スペクトルデータと完全に一致しました。 以上、全39工程により、世界に先駆けましてゾアンタミン系アルカロイド初めての全合成となります、ノルゾアンタミンの最初の不斉全合成を達成しました。
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