研究概要 |
本年度まず,海水電気分解装置(以下,海水電解装置)を用いた飼育用水および排水の殺菌効果の検討ならびに長期の飼育試験を行い,ついで同装置の水産物の衛生管理への応用について研究した。その成果は以下のとおりである。 1.海水電解装置の飼育現場への応用。 マツカワおよびヒラメの飼育用水を電気分解し,細菌数および細菌叢の変化を観察すると共に,長期の飼育試験を行った。さらに,飼育排水の殺菌に向けた稼動条件の検討を行った。電気分解した海水(以下,電解海水)中に含まれる塩素を活性炭により除去し,ヒラメおよびマツカワを1および2ヶ月間飼育しても,対照区に比べ生存率および成長率に差は見られず,海水の電解殺菌処理は紫外線およびオゾン処理同様,飼育魚に悪影響を与えないことが示された。電気分解前後で細菌叢は異なり,電解海水ではVibrio属細菌およびグラム陽性細菌が優勢となった。飼育排水の殺菌には,高濃度の塩素を含んだ電解海水を飼育排水に合流させる方法で,理論上毎時200t/hの飼育排水の殺菌が可能となった。 2.漁港の水質および細菌学的調査。 漁獲物の衛生管理に電解海水が応用可能かどうかを検討するための予備調査と漁港の水質および細菌の分布調査を行った。モデルとして選定した北海道道東部地域のサケマス定置網漁船の取水量ならびに漁港・市場の洗浄水は毎時15t程度であり,電気分解での処理が十分可能な量であった。港内海水の水質は港外と比較して大差がなかったが,酪農の盛んな地域であるために,年間を通して港内外から大腸菌群・大腸菌が検出された。他の主要な衛生細菌は検出されなかった。港内海水を有効塩素濃度が0.5mg/Lとなるように設定して電気分解し,1分間処理した場合,一般生菌数は99〜99.9%以上減少した。海水電解装置をユニット型にするか,小型装置を漁船に組み込めば,大規模な設備を整えることなく,常に港内より殺菌海水が得られることが示された。
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