研究概要 |
本年度,まず,飼育用水および飼育排水の殺菌に用いる装置の選定と稼動条件を決定し,次いで海水電気分解装置(以下,海水電解装置)を用いた水産物の衛生管理への応用について研究した。また,同装置を用いてカキの浄化試験を行い,さらにヒトのウイルス性食中毒原因ウイルスSRSVの代替ウイルスとして同じ科に属すネコカリシウイルス(FCV)を用いてカキ体内および生息環境中でのウイルスの消長について検討した。その成果は以下のとおりである。 1.飼育用水および飼育排水の殺菌に用いる装置の選定。 海産種苗生産現場に甚大な被害を及ぼすウイルス性神経壊死症の原因ウイルスNNVは紫外線に抵抗を示し,現在はオゾンで殺菌しているが作業中の事故が問題となっている。NNVを電気分解殺菌法により不活化したところ,3%NaCl溶液中では有効塩素濃度0.9mg/L,海水中では2.4mg/Lで十分不活化した。従って本症への対策には海水電解装置が適し,また飼育排水の殺菌には,流量の問題から海水電解装置のみが対応可能であった。 2.海水電解装置の水産物の衛生管理への応用。 港内海水を有効塩素濃度が0.5mg/Lとなるように設定して電気分解し,1分間処理した場合,一般生菌数は99〜99.9%以上減少した。漁船の甲板や器具類を電解海水で洗浄すると十分な消毒効果が認められ,また船倉および陸上タンクに電解海水を満たし有効塩素濃度および生菌数の消長を観察した場合,30分から数時間は塩素が残留し生菌数は低く保たれた。しかも漁獲物を投入すると速やかに塩素が消費され,食品への残留の危険性も低いことが明らかとなった。 3.海水電解装置のカキ浄化への応用および代用ウイルスの消長。 有効塩素濃度0.3mg/Lの電解海水でカキの浄化を行った場合,カキの生理に悪影響を与えることなくカキの大腸菌数が90%以上減少した。SRSVの代替として用いたFCVはBuffer中でも海水中でも温度が低いほど安定であり,カキ中腸線ホモジナイズ液中では速やかに不活化する場合と安定的な場合が観察された。
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