本研究では強磁性微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察しながら電気伝導測定を行い、その基本特性を評価することを目的としている。昨年度までに確立した技術により、微粒子の伝導測定とTEM同時観察が可能となっている。具体的には、金属微粒子を形成したAu探針の先端に、TEM内で別のAu探針の先端を接触させ、探針間の伝導を測定することで、TEM観察しながらの金属微粒子の測定が可能である。そこで、本年度は絶縁体と金属微粒子からなる複合膜を数種類作製し、TEM内伝導測定を行った。 Fe-SrF_2グラニュラー膜(総膜厚40nm)を用いた実験では、Au探針を軽く接触させ引き離していくことで、Au探針とグラニュラー膜の接触面積が小さくなり、測定対象となる微粒子の数を減らすことができることがわかった。また、測定対象となる微粒子の数を減らすことで、平均されてない個々の粒子の伝導特性を測定でき、室温において明瞭なクーロンプロッケード現象が発現した。 MgO(3nm)-Fe(1nm)-MgO(3nm)の順に成膜した試料による測定では、単一のFe微粒子(3nm)から構成される2重トンネル接合をTEM観察しながらの伝導測定に成功した。TEM観察により、伝導測定を行った瞬間の、2重トンネル接合の構造を明確にできた。また、Au探針の接触状態を変えることで、一方のトンネル接合の障壁厚さを変えることができ、この構造の変化にともなう伝導特性の変化を同時に評価することができた。2重トンネル接合において、障壁厚さが対称のときはクーロンプロッケードが現れ、非対称にするとクーロンステアケースが発現することを実験的に確認できた。 以上の結果はTEM観察しながら伝導測定をすることにより得られた知見であり、本研究で行ったTEM内伝導計測法が、ナノ微粒子の配置と伝導特性との関係を評価するのに有効であることが確認できた。
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