研究概要 |
本研究では、100GHz帯においてサイドバンドセパレーション・ミクサを開発することでALMAスペック(雑音温度で量子限界の3倍(17K@100GHz)、観測中心周波数比帯域30%、中間周波数(IF)帯域4-12GHz)の実現を目指している。この方式は2つのミクサの位相差を利用してイメージ側の信号を打ち消すため、無調整型でかつ広帯域な受信機を実現できる。 サイドバンドセパレーション・ミクサの実現には、広帯域で低雑音の超伝導ミクサを2つ揃えて組み合わせることが成功のカギとなる。本研究では、従来の手法では解析が出来なかった導波管内のチョークフィルタに挟まれた領域のインピーダンスを、電磁界解析ソフト等を用いて求める手法を確立した。この手法を利用して、新たにSIS素子、及びミクサマウントを設計・製作し、性能評価を行なった。その結果、6GHzという高いIF周波数帯で,95-115GHzの20GHzにわたり,受信機雑音温度25K以下という非常に低雑音かつ平坦な周波数特性を示す高性能なミクサの開発に成功した.ミクサ単体の雑音温度は8.5Kと量子限界の約2倍であり,同周波数の受信機性能としてはこれまで達成されたものの中でも最高の部類に属する。 開発した超伝導ミクサを用いてサイドバンド・セパレーションミクサの実験を行ない、110GHzでSSB雑音温度40K、サイドバンド比16dBの性能を達成した。さらに大阪府立大学のオゾン観測装置に搭載し試験観測を行ない、ミリ波帯サイドバンド・セパレーションミクサで世界で初めてオゾンスペクトルの受信に成功した。
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