研究概要 |
大腸菌FtsHは、不要な膜蛋白質を分解除去することで、細胞膜の品質管理を行う重要なプロテアーゼである。FtsHは、膜蛋白質を、膜から細胞質側へ引きずり出す(dislocation)ことで、processiveに膜蛋白質を分解していることが示唆されているが、その分解様式については不明な点が多い。以前、FtsHは、基質膜蛋白質のN末端細胞質領域が20アミノ酸残基以上の長さのときにそこから分解を開始し、基質分子のN末端側からC末端方向へとProcessiveに、Dislocationを伴いながら分解を進行させることを見いだした。今回、Processive分解の方向性について検討を行い、FtsHが、基質のC末端側からも分解を開始し、その分解は、N末端方向へも進行しうることを見いだした(1)。すなわち、FtsHは、双方向性のProcessivityを有していることが示された。また、基質によっては、FtsHが、N-C方向にも、C-N方向にも分解を行うことが観察されたが、このような性質は、異常膜蛋白質の効率の良い分解除去に一役買っているものと思われる。 加えて、ペリプラズム領域や細胞外膜の異常を感知するストレス応答経路であるCpx経路を欠損させた細胞では、FtsHの膜蛋白質分解が細胞の生育に極めて重要であることを示した(2)。このことは、Cpx経路とFtsHの膜蛋白質分解が、協同的に働き、細胞質膜の品質を維持していることを示唆している。 (1) Chiba, S., Akiyama, Y. and Ito, K.(2002) Processive membrane protein degradation by FtsH can be initiated from either end. J.Bacteriol. 184, 4775-4782 (2) Shimohata, N., Chiba, S., Saikawa, N., Ito, K. and Akiyama, Y. (2002) The Cpx stress response system of Escherichia coli senses plasma membrane proteins and controls HtpX, a membrane protease with cytosolic active site. Genes Cells, 7, 653-662
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