本研究では、光受容体ロドプシンと他の受容体との構造変化を比較し、一次構造の単なる比較からは浮かび上がらないG蛋白質活性化の必須要件を明らかにすることを目指す。本年度は研究計画に基づき、細胞質領域の構造変化過程の詳細が解っていない代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)の解析を目標とし、mGluRの生化学的アッセイ系の確立を行った。また、その系を用いていくつかの変異体の解析を行った。 1、mGluRの構造変化過程を生化学的に解析するために、Gi/Go共役型mGluR8を用いて培養細胞系で発現を行った。そして、mGluR8を発現させた形質膜を用いて、リガンド結合能およびG蛋白質活性化能をS/Nよく測定することに成功した。すなわち、mGluR8をmGluRモデルとする系を確立した。 2、ロドプシンやアドレナリン受容体では、分子内架橋法を用いて構造変化過程が解析されている。そこで、mGluR8に分子内架橋法を適用する目的で、細胞質第2ループと第3ループのN末端およびC末端にヒスチジンの導入を行った。その結果、多くの変異体でG蛋白質活性化の大きな低下が認められた。また、第2ループについては、アミノ酸残基を順にアラニンに置換した変異体を解析した。その結果、ループ領域のN末端およびC末端の残基を置換すると活性化に大きな影響が見られた。これらの結果から、これらループ領域の中でも付け根領域がG蛋白質活性化に重要であることが考えられた。今後、分子内架橋法を用いた構造変化過程の解析および細胞質ループのアラニン置換変異体の解析を進める予定である。
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