研究概要 |
本研究では,中層大気における平均子午面循環の特徴を定性的・定量的に明らかにし,その循環が気候変動に及ぼす影響を調べることを目的とする. 1.今年度は,大気微量成分に関する最新の衛星観測データのひとつであるUARS/HALOEの最新データを継続して収集・整理し,経度-緯度-高度-時間の4次元データセットを作成した. 2.昨年度まで行っていた研究(HALOEの水蒸気とメタンデータから熱帯下部成層圏の上昇速度を求めた研究)を論文にまとめて,アメリカ地球物理学学会誌に投稿した.一部の改訂を経て2003年12月に出版された. 3.次に熱帯対流圏界面域における水蒸気の季節変動や経年変動が生じるプロセスを明らかにするため,エアロゾル,および巻雲の時間発展について調べた.1993年1月に見られた水蒸気・巻雲の東西非一様な構造は,高度200hPa以下では対流活動と関連,200hPa以上では対流によって励起された波動と関連していることがわかった.また1993-2000年におけるシンガポール上空の風速と温度データとHALOEデータを統計的に解析することで,海洋大陸上空の高度100-200hPaに見られた巻雲が対流からの漏れ出しと関連した強い東風領域中に出現していることが明らかになった.本研究は国際学会で発表を行い,現在執筆中である. 4.水蒸気分布や巻雲出現に影響を及ぼす対流活動の数日-数10日変動と対流による成層圏波動の励起について,スマトラ島にある赤道大気レーダーの観測とシンガポール上空のラジオゾンデ観測で得られたデータを用いて調べた.解析を行った2001年11-12月は,対流圏上部から成層圏にかけて約5日周期のケルビン波が東進しており,対流圏では西風強化に伴う約10日に及ぶ対流強化とその内部を西進する約5日周期の対流システムが赤道80-120°Eに出現していた.この西進擾乱はスマトラ島の東側では北西進する熱帯低気圧型擾乱,西側ではスマトラ島西岸で励起され西進しながら赤道を離れて行く混合ロスビー重力波型擾乱であると考えられ,成層圏の波動と密接に関係していることが示唆された.
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