ブロムモザイクウイルス(BMV)の3aタンパク質を発現する遺伝子組換えササゲクロロティックモトルウイルス(CCMV)はササゲを全身感染宿主としない。一方で組換えCCMVを接種したササゲでは、全身感染能を獲得した突然変異体の出現が観察されていた。これらの突然変異体を解析することにより、3a遺伝子の特定の5カ所のコドンのいずれかに塩基置換が起こっていること、それにともなうLysかArgへのアミノ酸変異(適応変異)が突然変異体の出現に関与していることを明らかにした。また、組換えCCMVはBMV同じく細胞間移行に3aタンパク質だけでなく外被タンパク質も必要とするという特徴をもつ。この外被タンパク質要求性が適応変異によりどのように変化しているのかについて、外被タンパク質遺伝子を緑色蛍光タンパク質遺伝子に置換した変異体ウイルスを用いることにより調べた。その結果、適応変異を起こした組換えCCMV変異体は外被タンパク質非依存的に移行できることが分かった。同様に適応変異を起こしたBMV変異体も外被タンパク質に依存せずに細胞間移行できることが分かった。このことから適応変異により3aタンパクと外被タンパク質との相互作用が変化していること、そして変異の位置しているタンパク質の中央領域がその相互作用に関与する領域であることが示唆された。一方で、自然発生的な適応変異はアミノ酸特異的であることを示唆されていた。そこで、適応変異の見られた5カ所のコドンに人工的に塩基置換を導入し、LysあるいはArgのアミノ酸変異がササゲへの全身感染にどのように影響するかを調べた。その結果、LysあるいはArg以外のいくつかのアミノ酸への変異によっても組換えCCMVがササゲに全身感染できるようになることが分かった。この結果により、適応変異の出現に対して塩基置換あるいはタンパク質レベルで自然選択圧が働いていることが示唆された。
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