研究概要 |
非アルキメデス局所体上の簡約群の表現論を研究している。実Lie群の場合同様、作用素環論によりある種の位相群全般に対して得られているPlancherel公式や非可換フーリエ逆公式などを、調和解析によって精密化、具体化したものが研究の基盤となる。しかし非アルキメデス局所体上の場合には、最近までこうした基礎理論を正確に扱った文献が存在しなかった。そこで今年度はまず、昨年度に引き続いて、九州大学へ出張してp進簡約群のPlancherel公式についてのセミナーを行い、その成果をセミナリノートにまとめた。この中で明らかにされたPlancherel測度の基本性質と、大域体上の簡約群のアデール群に対するL函数及び絡作用素の性質を組み合わせて、偶数変数のユニタリ群からその準分裂内部形式への、誘導表現のPlancherel測度のリフティングを証明できた。特にその帰結として、偶数変数ユニタリ群の一般主系列表現の可約性を完全に決定することができた。下に述べるCAP保型形式の記述のU_<E/F>(3,1)の場合への拡張などに応用が期待される。これらの成果については7月に数理研短期共同研究「p進群の調和解析」、11月に広島大学での研究集会「整数論と幾何学的方法」、さらに年度末にDenis Diderot(Paris7)大学での「簡約群と保型形式」セミナーで発表した。最後の発表の際には数週間同大学に滞在し、Henniart教授(Orsay(Paris13)大学),Aubert教授(エコールノルマル)をはじめとする多くの専門家と情報交換、研究連絡を行った。 一方で2000年頃から進めてきた、4変数準分裂ユニタリ群のユニポテント保型形式の記述にも進展があった。Voganのコホモロジー誘導函手を用いたLanglands分類の再構築のおかげで、これまで困難とされていた特異なテータ対応がかなり記述できるようになった。これを用いてアルキメデス素点が扱えるようになったため、上記の群のユニポテント保型形式の局所成分の記述が完成した。また大域的なテータ対応と組み合わせて、よく知られたArthurの予想でき対されるすべてのユニポテント保型形式を具体的に構成できた。
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