研究概要 |
純電子プラズマを用いて,複数個の渦糸が格子状配列に並ぶ現象「渦結晶」が観測されており,背景渦度の存在が影響を及ぼしている可能性が示唆されている.前年度までに,その秩序化の過程において,背景渦度分布の寄与が重要である事を明らかにしてきた. 本年度は,薄く広がった電子プラズマの背景渦中に,様々な初期配位で三本の渦糸を入射し,その時間発展について細密な画像計測を行った.真空中においては,渦糸に非対称な初期配位を与えた場合,軌道は定まらず,渦糸の合体や破壊が起こり渦糸の数が減少してしまう.それに対し,背景渦中に入射した場合は,渦糸の位置関係が急速に対称的(正三角形)となる.この現象に注目し,渦結晶形成における背景渦度分布の効果について考察を行った. その結果,以下の事実を明らかにした. a)背景渦は,渦糸を対称な位置に移流する効果がある. b)渦糸が三本の場合,秩序化の時間な背景渦度が高い程早い. c)渦糸間の相対速度,及び対称構造からのずれは,時問に対してpower lawを持つ. d)背景渦度の存在が境界壁と渦糸の相互作用を緩和し,渦糸の動きが安定な領域を広げる効果がある. この成果は,物理学会他,複数の研究会で報告している. また,この成果をとりまとめた論文を,現在Phys.Rev.Eに投稿中である.
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