b→sγ過程でのCP対称性の直接的破れの探索では、b→sγを含むB中間子の崩壊を再構成し、各事象のフレーバーの特定(bクォークか反bクォークのいずれを含むかの特定)を行う。本年度は、昨年度に行ったモンテカルロシミュレーションを用いて確立した解析方法に基づいて、実際にデータを解析し、対称性の破れの度合いを測定した。 今回の測定に用いたデータは、平成15年度の夏までにBelle実験で収集された140/fbのデータである。このデータを解析した結果、およそ800のb→sγ事象が再構成された。これらの事象を、終状態によって、bクォークに由来するもの、反bクォークに由来するもの、どちらに属するかは不明なものの、3種に分離した。その結果、bクォーク、反bクォークに由来するものはともに約340事象であり、直接的破れの度合いは-0.004±0.051と求まった。また、この系統誤差をもとめるために、非対称度がないとされているB→Dπの非対称度を、データを用いて測定した。この測定結果から、検出器による非対称度は0.029であると求めることができた。その結果、その他の系統誤差と合わせて、直接的破れの度合いを-0.004±0.051±0.038と決定することができた。この結果は、従来のCLEO実験のよりも精度がよい上、異なる対称性の破れ度合いをもつとされるb→dγ過程の影響を受けていないものであり、標準理論を越える模型を制限することに有用であると思われる。 この結果は、平成15年度の夏に行われたLepton-Photon国際会議への寄稿論文として、また、秋に行われた日本物理学会にて発表された。現在、論文として投稿するための詳細な研究および草稿の準備を行っているところである。
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