直径400nmのNi_<81>Fe_<19>合金円盤状ドットにおける吹き出し磁化の反転磁場膜厚依存性を膜厚15〜80nmの範囲で調べた。その結果、反転磁場値は膜厚の厚い領域ではほとんど変化せず、薄い領域で大きな減少が見られた。この変化は、他のグループによるLLG計算の結果とほぼ一致した。計算では磁化反転がブロッホポイントの生成と進行によって起こっており、吹き出し磁化の反転過程が上記の過程によるという可能性を初めて実験的に示した。また、反転磁場の分布幅はいずれの膜厚においてもほぼ一定(約2000 Oe)であり、これらの膜厚では反転プロセスに大きな違いはないということを示唆する。 他に新たな系として、一列に並んだantivortex(AV)とcircular vortex(CV)が出現するトラック型(小判型)のドット(長手方向750nm、横幅400nm、厚き50nm)を作製した。AVは円磐状ドットに出現するCVと異なる種類のvortex(渦)であるが、その中心においてはCVと同様の理由で吹き出し磁化が存在する。この2種のvortex(渦)が交互に並んだスピン構造は薄膜における枕木磁壁として知られているが、本試料のような形状を導入することにより1つのドットの中央線上にCVを2つ、AVを1つ安定化させることができた。さらに磁気力顕微鏡観察により、AVにおける吹き出し磁化の外部磁場中の挙動を初めて明らかにした。AVにおける吹き出し磁化は、その出現理由からこれまで調べられて来たCVにおける吹き出し磁化と似た性質を示すと予想されたが、試料面垂直方向の磁場に対する反転磁場値はCVのものに比べ約1000 Oeほど小さいことが判明した。また、試料内の吹き出し磁化同士の相互作用等についても調べた。その結果、ゼロ磁場における100nm程度の距離では相互作用はほとんどなく、試料面内で枕木磁壁に垂直方向(短軸方向)に磁場を印加することで2つの吹き出し磁化を衝突させて消滅させることができた。
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