研究概要 |
本研究では、計算機シミュレーションを用いて電離圏E領域(高度90〜150km)において出現するプラズマ不安定現象(沿磁力線イレギュラリティ)に関する研究を行い、過去のレーダー、ロケット観測との比較、検証を行った。 電離圏E領域は中性大気からの影響を強く受けると考えられることから、大気重力波の伝搬に関する中性大気のシミュレーション[Horinouchi et al.,2000]から得られた中性風速のデータを、本研究で開発した電離圏プラズマのシミュレーションモデルに取り入れることにより、下層大気で生成された大気重力波が電離圏E領域に与える影響について研究を行った。スポラディックE層を形成する東西風速シアが高度100km付近に存在する場合、シア下部の東向き風により東向き伝搬の大気重力波はフィルタリングされ、西向き伝搬の重力波が卓越する。西向き伝搬の重力波は、東西-鉛直断面において西側が持ち上がった構造をしている。スポラディックE層の密度勾配により、この重力波の構造に沿った分極電界が生成される。地球磁場の傾きを考慮すると、この分極電界は水平面において北西-南東の波面構造を持ち、この構造に沿ったプラズマ密度構造が形成された。過去のレーダー観測から、北西-南東の波面構造を持つレーダーエコーは頻繁に観測されており、このレーダーエコーの構造は大気重力波と密接な関係があることが示された。また、2002年に実施されたロケット実験において観測された電離圏内の電子密度と電界は、波長10数kmの波状構造を示していたが、この構造も同シミュレーションにより再現された。本研究により、下層大気において生成された大気重力波が、電離圏E領域において非常に重要な役割を果たすことが示された。
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