研究概要 |
地震による断層破壊は、どのようにして成長し、どのように停止するのか、地震発生時に地震の最終的大きさは既に決まっているのか、大地震と微小地震の違いは何かを明らかにすることは、地震予知研究および地震防災研究にとって大変重要である。これらを明らかにするために、本研究では地震の破壊伝播速度に着目し、南アフリカにある金鉱山内で誘発される微小地震の破壊伝播速度の解析を行った。 南アフリカMponeng鉱山(旧称Western Deep Levels南鉱山)の地下2,650mには、金鉱脈下約50mの運搬坑道沿いに3成分加速度計9台がボアホール内に設置されており、採掘に伴って切羽の前面に発生する多数の微小地震を至近距離で観測している(Figure 1.)。1996年2-10月の間に、25,000以上のイベント(M-2.7-3.3)が約15kHzという高いサンプリングレートで観測された。これらのイベントの中には震源距離が数十〜数百mのイベントが多数含まれている。これらの中から、観測点配置がよく、サブイベントが明瞭に識別できる波形を選び、M1.4,1.1,0.8の3イベントに対して破壊伝播速度を決定した。 3イベントについて解析を行った結果、破壊伝播速度は2.10-3.01km/sと求められた。これらの値はS波速度の55-80%にあたり、中、大規模な自然地震の破壊伝播速度と同程度の値である。 本研究の結果から、南アフリカ金鉱山内での地震による地震放射エネルギーに対する破壊エネルギーの比は特徴的に大きいということはなく、中、大規模自然地震による地震波放射エネルギーと破壊エネルギーの比と同程度であるといえる。一方、地震によるひずみエネルギーの解放は、(1)摩擦エネルギー、(2)地震波放射エネルギー、(3)破壊エネルギーの3つに大別される。 したがって、南アフリカ金鉱山内での地震の静的応力降下量が中、大規模自然地震のそれと同じであると仮定すると、地震モーメントと破壊エネルギーの比、ひいては地震モーメントと地震波放射エネルギーの比は、南アフリカ金鉱山内の地震でも中、大規模自然地震でも同程度であると考えられる。
|