シナプス後肥厚部には多くのタンパク質が存在しており、それらが機能性膜タンパク質の局在や集積に関与していることが最近の研究で明らかになってきた。Homer1は代謝型グルタミン酸受容体やイノシトール三リン酸受容体(IP_3R)のクラスター形成に関与しているタンパク質である。Homer1はC末端のロイシンジッパー構造を介して自己重合を行うことができる。また最近の研究でIP_3RやTRP (Transient Receptor Potential)チャネルと共同し細胞質内のCa^<+2>濃度の調節を行っている事がわかってきている。このことからHomer1はシナプス後膜において膜タンパク質の局在・集積だけでなく細胞の機能調節に関しても重要な役割を果たしていると考えられる。 これまでの本研究でHomer1ファミリー保存領域の結晶化を行い1.8A分解能で構造を決定した。この構造解析の結果から結合相手が存在することで、自己重合を開始する制御機構の存在が示唆された。そこで今回、受容体の結合によるHomer1の構造変化と受容体へ与える影響を知るためにIP3RのN末側の細胞内領域とHomer1のEVH1ドメインとの複合体の構造解析を開始した。IP3Rのこの領域にはHomer1結合ドメインとIP3との結合ドメインを含んでいる。この領域はIP3Rの活性を制御している領域である。この領域とHomer1との複合体の構造を明らかにすることでHomer1の結合によるIP3RのIP3結合領域の構造への影響を知ることができる。これを明らかにすることでHomer1によるIP3Rの活性化の制御機構を知ることができると考えている。 これまでに、IP3Rの細胞質領域の発現精製条件を検討し、精製条件を確立し大量に試料を得ることができるようになった。現在はHomer1とIP3Rの細胞質領域との複合体の結晶化条件を検索中である。
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