太陽フレア・コロナ質量放出の3次元磁気流体モデリング

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02J01862
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 磯部 洋明 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
• キーワード: 太陽フレア / コロナ質量放出 / 磁気リコネクション / 浮上磁場 / 対流 / MHDシミュレーション

研究概要

本研究では太陽フレア及びコロナ質量放出の磁気流体モデリングを課題としているが、平成14年度はフレア、コロナ質量放出において重要な物理過程である磁気リコネクションと浮上磁場について並行して研究を行った。
磁気リコネクションに関しては、その理論モデルを確率する上で重要な物理量であるリコネクションレートを観測データから導出する方法を我々はこれまでの研究で開発しており、その方法を多数の観測データに応用して、リコネクションレートの統計的な振舞いについて新しい知見を得た。この結果に関しては現在論文を執筆中である。
また、日本の次期太陽観測衛星Solar-Bに搭載される紫外線撮像分光装置(EIS)の観測成果を最大にするための先行的な理論研究として、コロナ質量放出の2次元磁気流体シミュレーションに基づき、磁気リコネクション領域を分光観測した時に特徴的なスペクトルを計算した。それをもとにSolar-Bの観測計画への提言も行っている。この成果は日本天文学会秋季年会の他、Solar-Bに関する国際会議で発表しており、論文も執筆中である。
並行して、浮上磁場の3次元磁気流体シミュレーションを行っている。これまでの浮上磁場のシミュレーションの多くは、光球下の対流の取り扱いが不十分だったことから、我々は光球面の放射冷却と計算領域下部の加熱を仮定し、対流が継続する条件下での浮上磁場の計算を行っている。これまでの結果では、対流の発達に伴い、浮上した磁束が対流の下降流領域に集中し、小さく強い磁束管を形成する過程を再現することに成功している。この結果は2003年日本天文学会秋季年会で発表した。

研究成果

• [文献書誌] 磯部洋明, 柴田一成, 町田忍: ""Dawn-dusk asymmetry!" in solar coronal arcade formations"Geophysical Research Letters. 29,21. 2014 (2002)
• [文献書誌] 山本他: "Analysis of the temperature and emission measure of solar coronal arcades and test of a scaling law of flare/arcade loop length"The Astrophysical Journal Letters. 579. 49 (2002)
• [文献書誌] 浅井他: "Difference between spatial distributions of the H α kernels and hard X-ray sources in a solar flare"The Astrophysical Journal Letters. 578. 91 (2002)
• [文献書誌] 衛藤他: "Relation between a Moreton wave and an EIT wave observed on 1997 November4"Publications of Astronomical Society of Japan. 54. 481 (2002)
• [文献書誌] 磯部他: "Statistical study of reconnection rate in solar flares"Multi-wavelength observations of coronal structure and dynamics. 171 (2002)
• [文献書誌] 磯部洋明, 柴田一成, 横山央明, 今西健介: "Hydrodynamic modeling of a protostellar flare loop connecting a central star with its accretion disk"The proceedings of the IAU 8th Asian-Pacific regional meeting. II. 433 (2002)