本研究ではこれまでに、9層3次元フォトニック結晶に発光体と欠陥を導入した試料を作製することにより、完全フォトニックバンドギャップによる発光の減衰と、欠陥共振器による共振モードの制御を明らかにした。しかし、9層構造では欠陥共振器のQ値が100程度であり、レーザ発振には至らない。本年度は3次元フォトニック結晶を用いた点欠陥レーザの実現に向けて、非常に高いQ値(〜5000)が見込める17層構造の作製を行った。 本研究においては、ウエハ融着法によりストライプ構造を積層することで多層化を行っている。そこで多層化した場合の融着条件を求めた。以下に得られた知見をまとめる ・4層以上の多層化試料の場合、最高加熱温度(4層においては525℃)で加熱を行う前に、僅かに低い温度(4層においては475℃)で加熱することにより、より安定した界面状態を形成することが可能となり、歩留まりが向上した。 ・8層構造の融着条件を515℃・2時間であることを見出し、さらに、今回初めて8層積層構造に発光体を融着することに成功した。 ・最終的に、8層積層構造に発光体を融着した試料に別の8層積層構造を組み合わせることにより、17層3次元フォトニック結晶に発光体ならびに欠陥を導入した試料の作製に成功した。 本試料は17層構造であるため、非常に大きな完全フォトニックバンドギャップ効果が期待される。よって欠陥モードにおいてはパーセル効果などの現象が予測され、今後発光特性を評価することにより、自然放出と誘導放出の境界が曖昧となるような零閾値レーザの実証が成されると考えられる。
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