研究概要 |
本年度はまずアルキル側鎖の異なるHF系室温溶融塩を合成した。具体的にはイミダゾリウム環上の二つのアルキル側鎖のうち一つをメチル基に固定し、もう一方をメチル基からヘキシル基までの六種類を系統的に変化させたものを合成した。これらの物性を測定したところ、アルキル側鎖が短いほど導電率は高く、電気化学的な安定性は低いことが分かった。これらは報告にある他の室温溶融塩も含めて、ワルデンの規則に従い、このHF系の室温溶融塩についてイオンホッピングのような特殊な伝導機構が存在しないことを示した。SPrrig-8での高エネルギーX線回折測定によってこれらの液体のX線回折を行ったところ、アルキルイミダゾリウムカチオンに強い配向性があることが示唆された。側鎖の短い塩について、回折スペクトル中で最も強いピークの位置(FSDP)は、固体のバイフルオライド塩(1-ethyl-3-methylimidazolium bifluoride, EMImF・HF)中で見られた層状の構造に起因する回折線の位置と一致し、プロピル基より長くなると、徐々に低Q側にシフトし、この相互作用がアルキル側鎖の影響でより遠い相互作用へと変化していることが分かった。 HF系の室温溶融塩とBF_3,PF_5,AsF_5を反応させるルイス酸塩基反応を用いて、既知のフルオロアニオンを含む室温溶融塩EMImBF_4,EMImPF_6,EMImAsF_6を合成した。また遷移金属フッ化物NbF_5とTaF_5をもちいて新しい室温溶融塩であるEMImNbF_6とEMImTaF_6を合成した。これら二つの塩は、融点がゼロ度付近であり室温では比較的高いイオン導電率(8.5と7.1mS cm^<-1>)を示すことが分かった。
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