研究概要 |
本年度は、バイオ電池の基礎研究として、電極表面への酵素並びに電子伝達メディエータの固定化方法の検討を行った。電子伝達メディエータを高分子ポリマーに組み込む(レドックスポリマーと以下省略)ことで、電極表面での酵素並びにメディエータを高密度に固定化し、効率的に触媒機能を発揮させることが可能となる。合成したレドックスポリマーと酵素(グルコースデヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ)を組み合わせグルコース・酸素バイオ電池を試作した(Electrochemistry,70(2002)940)。中性条件下で作動し、隔膜を必要とせず、またアノードは酸素の影響を受けないバイオ電池としては初めての報告であり、今後のバイオ電池の展開を考える上で非常に重要な知見をあたえるものである。電池としての実用化を考える上で、まだ十分な作動性能を発揮しておらず、出力(電圧と電流値の積で表される)の向上が次の課題となってくる。この問題解決に向けて酵素とメディエータ間の酸化還元電位差と酵素反応速度の関係を考慮にいれた最適なメディエータの作成を行った。アノードにおいては、ジアホラーゼによるNADH酸化反応の電池への利用を考え、酵素反応速度を落さずに電位を負の方向にシフトさせたレドックスポリマーを作成し報告した(Chem.Lett.,(2002)1022)。この系は、NADH依存性酵素全般への展開が可能であり、電池燃料の選択性は大いに広がるものと考えられる。酸素還元カソードについては、ビリルビンオキシダーゼとメディエータ間の反応特性を評価し、その固定化を検討した。用いたメディエータは、大きな負電荷をもつシアノ金属錯体に着目し、その電位と反応速度の関係を調べ(Electrochem.Comm.,5(2003)138)、さらには、カチオン性高分子ポリマーを用いることで電極上への静電相互作用による固定化を行い、酸素の拡散律速となる大きな触媒電流を引き出し、その解析を行った(Chem.Lett.,(2003)54)。
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