2003年4月は、フィリピンでの長期滞在に必要な諸手続き(VISA申請等)を行った。5月から11月にかけては、フィリピンのセブ州にてフィールドワークを行った。内容は、州内に点在するポブラシオン(スペイン植民期につくられた歴史的な町)に赴きそれぞれの地図を作成したのち、残存する歴史的な建造物に関する聞き取り調査である。 滞在中、セブ市のサン・カルロス大学の研究所に所属させてもらうオブリゲーションとして、外国人院生は授業を受け持つことになっていたので、週2回はサン・カルロス大学歴史学科にて東南アジア史(植民期〜現代)の講義を行った。これは、外国に関する学習といえば、西洋(特にアメリカ合衆国)に偏っているフィリピンの教育課程において、よい刺激になったということである。同時に、現代フィリピン学生の持つ日本やアジアへの見方を学ぶことが出来、私にとっても素晴らしい経験であった。帰国前には、別キャンパスの建築学科においても、調査結果を現地の建築学生・教官と共有する目的をもって、一度セミナー講演を行った。 フィリピン北部の住宅と街区に関する論文が『建築学会計画系論文集』2003年10月号(No.572)に、セブ州でのフィールドエッセーが『アジア・アフリカ地域研究』2003年11月号(No.3)に掲載された。来年度に共著で出版予定の建築系教科書『世界住居誌』では、フィリピンの歴史的な住宅について3稿を執筆した。 帰国後、フィールドワークで得たデータに考察を加え、国内外のシンポジウム(口頭発表)に投稿し、2004年4月のコーネル大学東南アジアプログラム・院生シンポジウム(米NY州)と、6月の国際フィリピン学会ICOPHIL(蘭ライデン、IIAS)にて発表の機会を与えられている。
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