隔膜形成体の構築に関わる新規の細胞骨格関連タンパク質の検索

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02J02240
• 研究機関: 姫路工業大学
• 研究代表者: 五十嵐 久子 姫路工業大学, 理学部生命科学, 特別研究員(PD)
• キーワード: アクチン繊維 / 微小管 / 微小管結合タンパク質 / 隔膜形成体

研究概要

植物では、細胞の赤道面の隔膜形成体と呼ばれる構造内で細胞板が合成され細胞質分裂が完了する。この構造には、主要な細胞骨格成分である微小管が規則正しく配列し、細胞板の材料となる小胞の輸送に重要な役割を果たしている。アクチン繊維も存在しており、微小管と相互作用し機能している可能性もある。隔膜形成体の構築機構やダイナミクスを明らかにするためには、微小管やアクチン関連タンパク質を同定しその機能解析を行う必要がある。
高度に細胞周期を同調できるタバコ培養細胞BY-2を用い、隔膜形成体の細胞骨格成分単離を試みた。培養7日目の細胞を、細胞分裂終期に同調し、密度勾配遠心分離を用い、隔膜形成体の細胞骨格成分と核を分離した。単離した隔膜形成体の細胞骨格成分を2次元電気泳動で分離し、質量分析によりその成分を解析した。サンプルが多量に調製できないため、信頼性のある解析結果がえられていない。今後方法を改良する必要がある。
また、微小管結合タンパク質を細胞全体から単離しその中に、隔膜形成体の構築に関与するものを検索する試みもおこなっている。間期BY-2から調製した脱液胞化細胞(ミニプロトプラスト)の粗抽出液から微小管結合タンパク質(MAPs)得た。これらをカラムで分離した後、質量分析を行った。すでに隔膜形成体での局在が明らかになっているMAP65,MAP190,MAP200の局在が確認できた。同時に、新規のタンパク質がいくつか同定された。現在、その抗体を作製している。さらに、シロイヌナズナに相同性のあったタンパク質については、T-DNAインサーションラインを用い、組織への影響も観察したいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] Etuo Yokota, Seiji Sonobe, Hisako Igarashi, Teruo Shimmen: "Plant microtubules can translocated by dynein ATPase from sea urchin in vitro."Plant Cell Physiology. 36. 1563-1569 (1995)
• [文献書誌] Hisako Igarashi, Luis Vidali, Etuo Yokota, Seiji Sonobe: "Actin filaments purified cultured BY-2 cells can be translocated by plant myosin."Plant Cell Physiology. 40. 1167-1171 (1999)
• [文献書誌] Hisako Igarashi, Hidefumi Orii, Hitoshi Mori, Teruo Shimmen, Seiji Sonobe: "Isolation of a novel 190 kDa protein from tobacco BY-2 cells : Possible involvement in the interaction between actin filaments and microtubules"Plant Cell Physiology. 41. 921-931 (2000)
• [文献書誌] Andrei Smertenko, Norihan Saleh, Hisako Igarashi, Hitoshi Mori, Isolde Hauser-Hahn, Chang-Jiang Jiang, Seiji Sonobe, Clive W.Lloyde, Patrick J.Hussey: "A new class of microtubule-associated proteins in plants."Nature Cell Biology. 2. 750-753 (2000)
• [文献書誌] Patrick J.Hussey, Timothy J.Hawkins, Hisako Igarashi, Despina Kaloriti, Andrei Smerlanko: "The plant cytoskeleton : recent advances in the study of the plant microtubule-associated proteins MAP65, MAP190 and the Xenopus MAP215-like protein, MOR1"Plant Molecular Biology. 50. 915-924 (2002)