研究概要 |
実現確率探索は局面の実現確率を閾値として探索することで,より「有りそう」な手の場合はどんどん深く読み,「無さそう」な手の場合はほとんど読まない.これまで前向き枝刈りと探索延長によって行ってきたことをシステマティックに非常に簡単なアルゴリズムで行う優れた探索法であるといえる.ところが,従来の手法ではプロの棋譜から指し手の確率を計算しており,参考となる棋譜が十分に存在しない多くのゲームではこの手法は通用しない.我々はコンピュータの自動学習により指し手の確率を自動で計算し,実現確率探索をあらゆるゲームに応用させる手法,ARPS(自動実現確率探索)を提案した.実験には連結型の二人ゲームLines of Action (LOA)を選び13種類の分類を与えてARPSを実装し分類の確率を計算した.一般的な反復深化探索との対戦結果は,ARPSが反復深化に比べてより深くよりより絞り込んだ読みで大きく勝ち越しその優位性を示した. 種々の制約の範囲内で大会の組み合わせ方式を選ぶのは難しい問題であるが,これまで統計的に論じられた研究はなかった.我々は適当にレーティングを与えてシミュレーションを行い大会組み合わせ方式の妥当性を検証する方法を提案した.その題材として世界コンピュータ将棋選手権の2次予選を取り上げ,同大会で採用されている変形スイスやW杯本大会予選方式では弱いチームの方が多く予選突破をするいびつな逆転現象がしばしば生じていることを確認した.そこで前半はランダムで後半をスイス式とする新しい方式ランダムスイスを考案しシミュレーションを行った.その結果,ランダムスイスは総当りに近い形となり,しかも組み合わせに強い偏りは出ないので,既存の大会方式に比べてより好条件を満たしていると言える.我々は世界コンピュータ将棋選手権の予選方式としてランダムスイス方式を推奨した.
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