研究概要 |
実現確率探索[はプロ棋士の棋譜から指し手の分類と確率を計算し,有望そうな手を中心に先読みする.我々は先行研究において,自動対戦による調整法を用いることによりエキスパートの存在しないゲームでも実現確率探索が有効であることを示し,この手法をARPSと名づけた.ARPSは評価関数に対して適切な探索パラメータを自動的に獲得する.それゆえ,学習により評価関数を獲得しARPSを適応することにより,相当の強さのゲームプログラムをほぼ自動的に作成することが可能となる.我々は局面評価の要素だけを与え,評価関数のバランス調整,指し手の分類,各分類の指し手の確率計算を自動的にチューニングする手法を提案した.そしてこの手法をLines of Actionプログラムに適応し,自動チューニングにより相当の強さのゲームプログラムを作成することに成功した. 指し手の統計情報に基づく探索の効率化の研究では、これまでは大まかな分類があるだけで扱われることがなかった同種の指し手個々のソーティングの問題をプロ棋士の棋譜から得た頻度に基づく指し手の統計情報という新しい概念を導入することによって解決した。具体的には指し手の位置(元いた場所、移動後の場所)と駒の種類で分類をし、実際にプロ棋士の棋譜で指された回数をカウントする。この情報をソーティングに使うことで統計的な探索の効率化が図れる。実験による確認では、この手法によって問題を解くためのノード数が平均3.5%減少した。 次にThe effect of Mutualism- on Community Stability and Competitive Interactionの研究について述べる。共利共生関係のダイナミクスを調べるのに適していると考えられてきたいわゆるLotka-Volterra modelでは共利共生は生態系の安定に大きな役割を果たしていないとされてきた。種間の相利共生関係が一定の閾値以上になると個体群の数は無限に増殖してしまう。我々の研究ではモデルの発散を防ぐためラティスモデルと拡張型のロトカ-ボルテラ方程式を導入した。後者は前者の場平均型の理論である。これらのモデルは有限空間における種の競争を表現している。どちらのモデルも共利共生の影響が強い時にはともに安定している。ラティスモデルでは種の空間分布は環境条件に依存してある一定のパターンへ進化していく。
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