本研究では正電荷密度が極めて高いリチウムイオンを輸送ターゲットとし、リチウムイオンを単独カチオン成分として有するイオン性液体と高分子を組み合わせることにより、化学・電気エネルギー変換系構築の新しい指針を確立することを目的としている。本年度は以下に示す研究を展開した。 (1)イオンのみを構成成分とする新しい液体であるイオン性液体の構造と物性やイオン伝導現象との相関性は未だ不明確であり、リチウムイオン性液体創製にはこれらの明確化が必須である。そこで代表的なイオン性液体11種類について検討を行ったところ、これらのイオン性液体中では塩単独であるにもかかわらず、極めて高いイオン活量を有することを見出した。これはイオン性液体の定義に迫る重要な知見である。 (2)リチウムイオン性液体を実現するためには、クーロン相互作用が強いリチウム塩をイオン化させなければならない。そこでイオン解離の支配因子を系統的に解釈するため、リチウム塩を含有した様々な非水系電解質溶液に関する検討を行った。イオン解離性はルイス酸・塩基相互作用によって説明され、特にアニオン電荷近傍の置換基構造によって、イオン配位能が低い溶媒中でも大きなイオン解離度の付与が可能であることを明らかにした。 (3)リチウム塩単独で高いイオン活量を与える分子設計として、電解液中で高解離性を与える置換基構造を有するアニオン骨格と同一分子内に、さらにカチオン配位サイトを導入することを(1)および(2)から着想、合成を行った。得られたリチウム塩は室温で液体であり、様々な解析からリチウム塩単体でありながら高いイオン活量を有することを見出した。これはリチウムイオン性液体ともいうべき新しいリチウム塩であることを示す結果である。
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