本年度は、昨年度来研究協力員として取り組んできた、厚生労働省・成育医療研究委託事業研究「重症障害新生児医療のガイドラインに関する研究」をとりまとめ、「重篤な疾患を持つ新生児の医療をめぐる話し合いのガイドライン」の作成に従事した。研究課題である「関係性の権利と責任」という観点から、話し合いというプロセスの中で複数当事者の権利と責任を明らかにする可能性について検討を重ねた。社会学、倫理学、医学その他の専門家とともに、メーリングリスト上では1000通を越えるメールで意見交換を行い、月1回以上のミーティング、第39回日本新生児学会、第48回日本未熟児新生児学会、第15回生命倫理学会、及び東京女子医大での公開シンポジウム等で検討を重ね、公表するに至った。その成果は報告書として今年度末までに公表される。 また、ガイドラインの検討と平行して、法哲学的に理論的観点からさらに関係性の権利と責任の理論構築へ向けて、従来の自己決定権理解の偏向について、米国判例における自己決定概念の生成、換言すればプライバシー権の派生的権利としての自己決定権生成の歩みを検討し、分析した。その成果は、10月24・25日に明治大学で行われた「比較家族学会」での報告に表れている。 さらに、関係性の権利と責任の理論を提示するに当たっての主体として、どのような主体を措定すべきかについて、検討した。これは、現在行われようとしている司法制度改革における非専門家に対する法学教育のあり方とも連動する。非専門家に対する法学教育の試みとして、初等・中等教育における法学教育の実践をいくつか行った。その成果は「法学教育--米国における法教育教科書から見た-考察・プライバシーを題材として--」、及び「初・中等教育における法学教育--プライバシーを教える--」に記されている。
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