日米のX線天文衛星「チャンドラ」と「あすか」を用い、我々の銀河中心領域からの蛍光X線を詳細に調べた。特に巨大分子雲M0.11-0.08について電波の密度分布を用いた数値計算と観測結果を比較し、分子雲が外部からの強いX線に照らされて蛍光・散乱で光る「X線反射星雲」で説明できることを確認した。この照射源の明るさを計算することで、これまで提唱して来た"銀河中心核の巨大ブラックホールが数百年前には現在の百万倍明るかった"という仮説をさらに補強することができた。すでに発表済みの射手座B2や射手座C領域の巨大分子雲の結果とあわせ、現在観測されているのより千年前から百年前までの間の中心核ブラックホールの光度変動を求め、国際学会等で発表を行った。この成果に関しては記者発表も行い、朝日、毎日等の全国紙に掲載された。 一方、天体観測に用いられるX線CCD検出器の実験では、今年度は将来的に必須となる高速撮像を目指した駆動・読み出し回路の作成に重点をおき開発を行った。衛星に搭載して観測を行う際に最も処理に時間のかかるイベント抽出をハードウエアで行うため、FPGAにイベント抽出の論理回路を実装した。また、2005年打ち上げ予定のX線天文衛星Astro-E2に搭載するCCD検出器XISについての性能予測を行った。すでに打ち上げられた衛星のデータをもとに打ち上げ後のバックグランドを見積もり、データ転送レートへの影響を調べた。他に較正用X線源を設計し、X線強度を評価した。これについては実際にテストボディを用いた実験を行う予定であり、治具作成や実験システムの構築も行っている。
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