めっき浴中の添加剤(有機分子)濃度を変化させることでめっき反応進行時における添加剤の挙動を制御し、軟磁性CoNiFe合金薄膜中への異種元素の共析について検討した。特に、炭素(C)共析量を変化させることで薄膜の延性の制御を試み、その形状から高い延性が要求される磁気記録ヘッド用パターンに対してもCoNiFeMoCS薄膜を形成させることに成功した(パターン形成は所属期間の先行研究グループに参画)。その内容は学会プロシーディングとしての刊行が決定しているほか、現在論文投稿の準備中である。また、CoNiFe薄膜中での各種元素の存在状態についてもX線光電子分光法等を用いた解析を進めている。さらに、析出表面(固液界面)での添加剤の挙動とそのめっき膜への影響を、Cuめっきを対象として電気化学的手法を中心に検討し、種々の添加剤がもたらす効果とその要因となる分子の挙動に関する基礎的な知見を得た。こちらも論文投稿準備を進めている。 また一方で、液相からの磁性ナノ粒子の調製に新たな手法で着手した。具体的には、ナノスケールに制御された水相を有する逆ミセルを反応場とし、Fe^<2+>イオンあるいはFe^<3+>イオンの還元と酸化を連続的に行うことにより、粒径が数nmのγ-酸化鉄(Fe_2O_3)の調製を試みた。有機分子添加により逆ミセル溶液から回収した試料について、X線回折法による結晶構造解析ならびに超伝導量子干渉計による磁気特性評価を行い、比較的単分散かつ結晶性の高いγ-酸化鉄ナノ粒子の形成を確認した。この結果に基づき、磁性ナノ粒子/機能性有機分子複合化による磁気特性の制御への展開を現在試みている。
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