本研究課題を遂行するため、平成15年度において以下のような研究を行った。 1)資料の収集・整理:昨年度から引き続き、ネーデルラント絵画の降誕図像の、美術史的・歴史的文献資料の収集を行い、文献目録を作成すると共に、画像を添付した、総合的なデータベース作成を行った。このデータベースは「降誕の穴」という、15〜16世紀にネーデルラントやドイツで見られるモチーフを持つ降誕図を中心に、それに直接的・間接的に関連する図像表現を集めるものである。データベース内には基本的資料の他に、独自の視点によるモチーフの解釈・分類などの項目をつくり、研究に生かしている。データベースの母胎としては、ファイルメーカーProを使用している。データベースそのものはまだ未完成で、来年度以降も続けていくことになる。 2)本年度の新たな着眼点:昨年度行った口頭発表をもとに、ネーデルラント絵画に描かれた寄進者に関する考察をまとめ、研究成果を『國學院大學紀要』にて発表した。さらに15世紀のネーデルラントを中心とした「降誕の穴」図像に関する研究を進めた。この研究に関しては、来年度、学術雑誌にて発表する予定である。 3)現地調査:南ドイツを中心に調査を行い、15世紀のドイツ、ネーデルラントの画像・資料を収集した。今回は、降誕図像に描かれた「穴」の画像を収集することが、主な目的であった。特にネーデルラント絵画は、著名なもの以外の作品画像が入手しにくいため、調査旅行の際に画像データを収集することは、本研究を進めていく上で、非常に重要となってくる。
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