研究概要 |
2002年度は、研究実施計画に即して2つの課題を設定し、研究活動に取り組んだ。 1.大戦中の日系人強制収容に対する、合衆国の補償法の変遷の検討 この作業は先行研究の整理と、ハワイの日系社会の背景を探索することを,目的とした。戦後の補償法の内容を検討することで、1980年代からアメリカのネイション概念に日系人の存在が組み込まれたことが把握できた。この作業の成果は、11月の日本社会学会で「グローバル化とアメリカの国民統合--日系人強制収容への補償にみるネイション概念の変動」という表題で発表した。同内容の論文は日本社会学会の『社会学評論』に投稿し、2003年2月現在、掲載審査中である。 また、1988年の補償法で定められた「公教育における日系人史学習の必須化」がどの程度現実化したのかを把握するため、アメリカの歴史教育の内容を探索する作業を派生的に行った。ここでも教育内容における1980年代半ばの変化を把握でき、この知見を日本の歴史教育の特徴と対照させることで、「日米歴史教科書とグローバル時代の歴史教育」をまとめた。この論文は2003年刊行予定の渡辺雅子編『叙述のスタイルから見た歴史教育』(三元社)に収録される。 2.ホノルル市在住の日系人への聞き取り調査 本研究の主要課題であるフィールドワークを9月にホノルル市で行った。18名の日系人と、4名の白人研究者へのインタヴューを行い、日系ハワイ市民のエスニックアイデンティティの現状を調査した。日系人のアイデンティティ構成に明確な世代差が存在すること、また3世・4世の若者には混血者も多く、「日系人」というカテゴリ自体が成立しにくいことを把握できた。これにより、来年度以降のフィールドワークは量的調査ではなく、質的調査として遂行する方針が確定した。2003年2月現在、この作業の成果をまとめる論文を執筆中であり、2003年度に学術誌にて発表する予定である。
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