研究概要 |
細胞中の物質輸送を担っているキネシンやミオシンVは1分子でレールタンパク質である細胞骨格から解離することなく数μmの距離だけ運動することができる。しかし、その動作機構や動作原理はまだ完全に明らかになっていないのが現状である。そこで我々は1分子力学測定の技術を駆使してこれらを明らかにするのが研究目的である。今年度我々はキネシンと同様な動作機構をもつと考えられるミオシンVについて重要な結果が得られた。まずミオシンVは1分子でレールタンパク質であるアクチンの線維の周りを回転しながら運動していることを突き止め、これを論文として報告した。(M.Y.Ali.,Uemura, S. et al. Nature Structural Biology.9,464-467(2002)) また、東北大学・学際科学研究センターの樋口秀男助教授との協同研究のもとで以下の重要な実験結果を得た。 1、世界最高の力・時間分解能を持つ光トラップナノ計測装置を用いてミオシンV1分子の36nmステップ中に11nmと25nmに分解できる中間状態を発見することができた。 2、中間状態の待ち時間はヌクレオチド状態に依存しない結果から、中間状態がATP加水分解過程と対応することを初めて明らかにした。 3、中間状態は負荷依存性をもつことを示し、より詳細な運動機構が明らかとなった。 これら実験結果は今後論文として発表する予定である。(Uemura, S., Higuchi, H. & Ishiwata, S. Nature Cell Biology. Manuscript in preparation)
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