研究概要 |
細胞中の物質輸送を担っているキネシンやミオシンVは1分子でレールタンパク質である細胞骨格から解離することなく数μmの距離だけ運動することができる。しかし、その動作機構や動作原理はまだ完全に明らかになっていないのが現状である。そこで我々は1分子力学測定の技術を駆使してこれらを明らかにするのが研究目的である。昨年度、我々は光ピンセット法を用いてキネシン・微小管結合を破断させることにより、各ヌクレオチド状態での結合様式を特定し、これを論文として発表した(Uemura, S. et al. Proc Natl Acad.Sci USA.99,5977-5981.(2002))。この結果はADP結合状態で単頭弱結合、ヌクレオチド非結合状態で単頭強結合であることを示したが、今年度はADP濃度を変化させることでこれらの結合平衡に伴う単頭強結合・弱結合の割合変化を捉えることができ、さらに負荷を加える方向によってADPの結合平衡が変化するという結果を得た。この結果は今年度論文として発表された(Uemura, S and Ishiwata, S. Nature Struct Biol. 10,308-311.(2003))。 また、負荷上昇速度に伴う結合平衡の変化についてモデルを構築し、その平衡状態の結合定数を決定することできた。この結果もまた今年度、論文として発表された(Kawaguchi, K., Uemura, S and Ishikawa, S. Biophys J.84,1103-1113.(2003))。 さらに、現在東北大学・学際科学センターの樋口秀男助教授との協同研究のもとで1分子ミオシンVの36nmステップが12nm+24nmに分解できる中間状態を持つことを明らかにし、化学状態も特定することで新しい運動モデルを構築することができた。現在この結果は論文として投稿中である(Uemura, S. et al. Nature Cell Biol.投稿中)。
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