DAT1のVNTR多型は、約40塩基の繰り返しであるが、これらはmRNAにおいては3'UTRに存在するためタンパクの構造に影響をもたらすとは考え難い。しかし、私の以前の結果や他のグループの結果から、この多型領域が遺伝子発現において何らかの機能を持つことが予想される。反復回数によってレポーター遺伝子の発現に差があることからも、この領域がDAT1遺伝子発現量に個体差をもたらす可能性が示唆される。 私は多型領域が転写を調節するシスエレメントである可能性を考え、レポーター遺伝子HIS3とLacZの上流に、10回繰り返しの多型領域を持った遺伝子をyeastのゲノムに挿入し、yeast one-hybrid systemを利用して多型領域結合タンパクのスクリーニングをヒト胎児の脳cDNA libraryから行った。選択培地で生育し、β-galアッセイで強い活性を示した17クローンにbHLH型の転写因子であるHesr1のDNA binding domainを含むほぼ全長をコードするものが2クローン存在していた。現在、大腸菌で発現させたGST-Hesr1融合タンパクを精製し、EMSAによる直接的な結合の確認を検討中である。 また培養細胞における系では、私を含め他のグループにおいてウイルス由来のプロモーターや、異なる細胞株を利用している為、由来の違いからか結果が一致せず、生体内を直接的に反映しているとは断定できない。そこで私は、より生体内の環境に近づけるためドーパミンニューロンであるヒト神経芽細胞株SH-SY5Y細胞において、SV40またはDAT1遺伝子のプロモーターを用いたルシフェラーゼの下流に、それぞれ6、7、9、10、11回の反復回数を含むDAT1遺伝子3'UTRを持ったレポーターコンストラクトを用いて、多型領域の遺伝子発現における影響を検討している。
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