前年度までに、DAT1遺伝子のVNTR多型は、反復回数によってレポーター遺伝子の発現に差があることと、この差が3'非翻訳領域依存的な遺伝子発現抑制の影響を受けることが解った。またVNTR多型近傍領域に作用する因子としてbHLH型の転写因子HESR1がDAT1遺伝子発現に関わることをルシフェラーゼレポーターアッセイにより示した。 今年度においては、まずRNAiを用いたhesr1遺伝子特異的ノックダウンにより、SH-SY5Y細胞において見られたDAT1遺伝子3'非翻訳領域依存的な遺伝子発現抑が緩和されることを示した。また、HEK293細胞においてHESR1は内在性のDAT1遺伝子発現を抑制することを示した。HESR1によるDAT1遺伝子発現調節が直接的な結合によるものかどうかを検討するために、ゲルシフトアッセイを行ったところ、HESR1はDAT1遺伝子VNTR多型近傍領域に直接結合することが解った。加えて、NCBIデータベースを元に、ヒトhesr1遺伝子に存在し、DNA結合に重要なbHLHドメインのロイシンをメチオニンに置換するSNP候補C386Aに注目し、機能解析を行ったところC386A変異体はDAT1遺伝子発現抑制活性を失うことをレポーターアッセイにより示した。この活性の違いはDNA結合能を失ったことによるものであることをゲルシフトアッセイにより示し、これはホモ二量体形成能を減少させているためであることをYeast two-hybridにより示した。 以上のことからヒトhesr1遺伝子SNP候補C386AはDAT1遺伝子が関わる多因子性表現型のリスクファクターである可能性を示唆した。
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