今年度は、ブリテン諸島全体を視野に入れて、中世初期アイルランドの世俗社会について研究を進めた。アイオナがそうであったように、ブリテン島北部には当時、多くのアイルランド人が居住していたからである。とくに王権に注目して研究を行った。 8月下旬から1カ月程、ブリテン諸島を研究のために旅行した。グラスゴー大学とダブリン大学で資料収集を行い、8月下旬に開催されたウェールズでの「Celtic Studies」の国際大会に出席した。ここで、海外の多数の研究者と交流し、研究について情報・意見交換を行った。また、オックスフォード大学の図書館で、7世紀末に作成された古アイルランド語の法史料『アダムナーン法』の写本研究を行った。 10月12日に、日本ケルト学者会議2003年度大会のフォーラム・オン『島のケルト』概念を問う」で、報告者の一人として発表を行った。題は『島のケルト』再考-ブリテン諸島史の可能性を探って」であった。また、11月30に、日本アイルランド協会・2003年度年次大会において、テーマ発表「中世初期アイルランド-王権・詩人・女性」を行い、報告者の一人として発表した。題は「中世初期アイルランドの王権-『タラ王』、イー・ネール王、『アイルランド王』」であった。 秋に英語論文「Iona and the kingship of D'al Riata in Adomnan's Vita Columbae」を執筆し、現在、アイルランド中世を専門に扱う海外の雑誌に投稿中である。 他にも、一年を通じて、古アイルランド語のテクスト購読会を有志数人で続けた。
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