量子力学の解釈・測定問題についての一解答、様相解釈について研究した。なかでも、P. Vermaas、G. Bacciagaluppiらにより考案された、この解釈へのダイナミックス導入の試みを主要な研究テーマとした。 P. Vermaasは、測定過程をある特殊な形式を満たすものと想定し、その想定のもとでは、被測定物理量が「縮退」している場合であれ、彼を含む人々により考案されたダイナミックスを用いると、測定装置が測定相互作用後にもつべき望ましい性質を装置に帰属させることができる、と論じた。このテーマについて「科学基礎論夏のセミナー」(2002年8月)(北海道大学)、及び「日本科学哲学会」(2002年11月)(新潟大学)において、研究発表を行い、まず次のことを明らかにした。 ・Vermaasが与えた測定過程の形式は、測定における因果的連鎖を考慮に入れていない。すなわち、まず測定対象と測定装置の一部分が相互作用し、次にその測定装置の一部分とポインター(あるいは、ポインターにより「近い」装置の一部)とが相互作用するといった、測定過程における因果的連鎖がVermaasの「形式」において無視されている。 では、因果的連鎖をも考慮に入れた場合には、ダイナミックスを用いたいかなる解答を与えることができないのだろうか。この問いに対し、次のことを明らかにした。 ・測定過程がみたすことが自然と思われる数学的形式の条件を明示的に提示し、その条件のもとでは、因果的連鎖を取り込んだ解答を与えうることを数学的に示した。 なお、上述の結果について論文作成中であり、雑誌発表する予定である。
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