研究概要 |
洪水氾濫による被害軽減を図るためには,ハザードマップや避難対策などのソフト面での危機管理対策を強化する必要がある.本研究は,複雑な構造を有する市街地での危機管理対策を策定する上で不可欠な氾濫シミュレーションモデルの開発を目的としたものである.本年度の実績は以下の通りである. (1)数値モデルの構築 市街地氾濫を高精度に予測するためには,道路網,家屋群,樹林帯,地形起伏等の市街地構造を的確に再現することが重要であることを踏まえ,複雑な境界形状を少ない格子で高精度に再現可能な非構造格子を用い,高解像度風上解法の一つである流束差分離法(FDS法)に基づき平面2次元洪水流数値モデルを構築した.また,市街地構造の要素として,物体および物体群,水没/非水没状態となる地形起伏を取り上げ,それらの取り扱いについて検討した.これらの取り扱いを前述の平面2次元洪水流数値モデルに組み込むことで,氾濫シミュレーションモデルを構築した. (2)実験データの収集 平面2次元洪水流数値モデルの基本性能を明らかにすることを目的として,水平底面上の2次元部分ダム破壊流れの水深および流速に関する検証用データを収集した.また,上述した市街地構造の取り扱いの妥当性とそれらを組み込んだ氾濫シミュレーションモデルの予測制度を検討する目的で,構造物群,樹林帯および地形起伏が存在する氾濫原での氾濫流の水深および流速に加え,構造物に働く流体力に関する検証用データを収集した. (3)モデルの検証 構築した数値モデルを上述した実験に適用し,得られた実験データに基づき検証した結果,いずれに対しても,本数値モデルが実験結果を十分な精度で再現できることが明らかとなった. 以上より,平面2次元洪水流数値モデルの基本性能,市街地構造の取り扱いの妥当性および氾濫シミュレーションモデルの予測精度が明らかとなった.
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