研究概要 |
自食作用は、細胞質がオートファゴソームに取り込まれ、細胞内分解コンパートメントに輸送されるシステムであり、単細胞真核生物である出芽酵母から高等動植物にまで普遍的に見られる現象である。自食作用は基本的に非選択的な輸送システムであるが、出芽酵母においては、いくつかの液胞加水分解酵素がオートファゴソームに選択的に取り込まれ、細胞内分解コンパートメントである液胞へ輸送されることが知られている。アミノペプチダーゼI(以下API)はそのような液胞タンパク質のひとつであり、私は前年度までに緑色蛍光タンパク質を融合したAPIを作成し、APIの細胞内局在と動態を光学顕微鏡を用いて明らかにしてきた。 本年度もAPIの可視化解析を進め、APIがオートファゴソームに取り込まれるまでに、これまで知られていたよりも多くの段階を踏むことを明らかにした。APIがCvt complexと呼ばれる大きな集合体を形成するためにはアミノ末端の20アミノ酸残基が重要であること、Cvt complexの形成とオートファゴソームの形成は全く独立して進行する現象であること、そして、Cvt complexがオートファゴソームにターゲティングされるためにはCvt9,Cvt19タンパク質が必須であることなどである。現在、オートファゴソームにより選択的に輸送される別のタンパク質、α-マンノシダーゼの輸送機構の解析を進めている。APIの輸送機構の解析とあわせ、オートファゴソームによる選択的輸送の基本的な機構をさらに明らかにしていきたい。
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