現在までに、植物ペルオキシソームへのタンパク質輸送に普遍的に関わる因子AtPex14p、AtPex5p、AtPex7pの機能を同定してきた。しかし、植物ペルオキシソーム形成・維持にはまだ数多くの因子が関与することが考えられる。そこで、他生物種で同定されたペルオキシソーム形成因子(ペルオキシン)をシロイヌナズナゲノムから相同性検索により選抜した。この結果、18の推定ペルオキシンの存在が明らかとなった。これらのうちRING fingerドメインをもつことが特徴的なAtPex2p、AtPex10p、AtPex12pについて相互作用解析を行ったところ、AtPex10pとAtPex12pはそれぞれのRING fingerドメイン間で結合したが、AtPex2pとは結合しなかった。この結果は、他生物種で同定されたPex2pの特徴とは異なっていた。 一方、ペルオキシソームタンパク質輸送に関わる新規因子を同定することを目的として、AtPex14pを囮にした酵母two-hybridスクリーニングを行ったところ、2つの候補因子(#46、#16)が得られた。そのうちの一つ#46もまたN末端側にRING fingerドメインをもっており、さらに興味深いことにAtPex14p側の結合領域はAtPex5pの結合領域と完全に重複していることが明らかとなった。このことからタンパク質輸送において#46がAtPex14p、AtPex5pとどのように関わっているのか興味が持たれる。現在、様々なシロイヌナズナ形質転換体の作製を行っており、これらの表現型解析から推定ペルオキシンと#46、#16の機能を同定していきたい。さらに近年、RING fingerドメインがユビキチンリガーゼ活性をもつという報告もされているため、今後これらの因子がタンパク質分解系に関与しているかについても注目して研究を進めていく。
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