本年度は、昨年度のSunyaev-Zel'dovich効果を用いた電波銀河のエネルギー源に関する研究成果を踏まえ、実際に宇宙線生成の舞台となる衝撃波面での粒子加速過程の素過程に重点を移した。特に以前からの電波領域で詳細な観測の存在、さらに近年のX線観測により広範囲な観測データが揃ってきたことから、電波銀河最縁部衝撃波の構造とそこでの粒子加速に重点を置いた。衝撃波粒子加速は、衝撃波流内で乱れた磁力線により粒子が繰返し散乱を受けることでおこると考えられている。電波銀河の衝撃波では、強衝撃波が電波領域での偏波観測から示唆されるのに対し、X線観測は単純に強衝撃波での粒子加速を仮定した場合に比べはるかに弱く、衝撃波が強衝撃波から予測される結果とは矛盾する。本年度はこの矛盾を調べることから電波銀河での宇宙線加速の素過程の解明に取り組んだ。 X線観測が示唆する結果は衝撃波の速度が電子に対しては亜音速になっている可能性を考え、電子とイオンの二流体性を考慮に入れた電子加速について考察した。この問題は太陽風中の衝撃波と物理的状態が似ており、本来共通の基礎となる磁気プラズマの扱いが必要だが、直接扱うのが困難なため出発点として計算は流体近似で進めている。同時に基礎的な粒子シミュレーションの開発をも進めている。現時点で進めているの流体近似の計算では電波観測から示唆される磁場の構造を取り入れられないという難点があるため、来年度はシミュレーション手法で宇宙線加速現場の衝撃波構造のより精緻な解明をめざす。
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