本研究の最終目的は神経回路形成の初期形成過程の解明を目指すことである。発生初期の神経細胞の動向を知るためには、特定の神経細胞を特異的に可視化する標識法と生体内の発生を再現する培養系の確立が不可欠である。本年度は、初期発生の知見の乏しい、髄脳の抑制性伝達物質GABAを有する神経細胞(GABA作動性ニューロン)に着目して研究を行った。 まず、特定の神経細胞を可視化するために、GABA作動性ニューロン内で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するトランスジェニックマウス(GAD-GFPマウス)を使用した。次に、本動物の全胚培養下で蛍光タンパク質DsRed2を発現するプラスミドベクターをエレクトロポレーションで導入し、GFPと異なる波長で可視化される特定のGABA作動性ニューロンを追跡した。器官培養系においても、移植や切除などの操作により、細胞の動向を調べた。一連の実験により、発生初期の髄脳におけるGABA作動性ニューロンは、腹側の領域から背側方向に移動し、広範な分布パターンを形成することが明らかになった。 本研究によって得られた知見は、平成15年7月の神経科学大会で、本人の口頭発表により公表され、現在、論文発表に向けてより一層のデータ収集を行っている。さらに、感覚性脳神経である三叉神経の初期形成過程に関して、器官培養系における移植・置換により、軸索の伸長・停止に関わるメカニズムを組織・細胞レベルで提唱することができた。この知見は、権威ある国際誌に受理され、平成15年に掲載された。このように、本年度は、研究目的を遂行する基板を着実に固めつつある。
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